南ヨーロッパ、とりわけ地中海沿岸地域では、山火事がもはや稀に起こる夏の脅威ではなく、日常の風景となりつつあります。この変化は、まさに気候変動の深刻な影響を如実に物語っています。例えば、スペインやギリシャでは、ここ数年の火災シーズンにおいて、焼失面積が過去最高の78％以上増加し、緑豊かな森が一瞬のうちに灰と煙に变わってしまっています。こうした火災は、もはや偶発的な自然災害ではなく、気温が40℃以上に達する酷暑や、人為的な干ばつといった複合的な要因が背景にあります。炎熱と乾燥が相まって、森はまるで火薬庫のように変貌を遂げ、ほんの小さな火花一つで連鎖的に大火災へと発展してしまいます。これらの現象が示すのは、もはや気候変動が未来の問題ではなく、今この瞬間に私たちの生活や環境に急速に迫っている危機だということです。火災によるダメージは、単に生態系の破壊だけにとどまらず、経済や社会のインフラまでも一気に蝕んでいます。

さらに、私たちが気づきにくい重要な側面として、この山火事と洪水の密接な“つながり”があります。火災後の土地は、親水性のない硬い層となり、雨水を吸収しにくくなってしまいます。その結果、少しの雨でも土地は水を弾き、逆に激しい流れとなって町や村を襲うのです。例えば、スペインのエブロ川流域では、火災の直後に洪水のリスクが最低でも10％増加することが確認されていますが、この現象はあくまで一例です。もし、世界的な排出量削減や気候対策が遅れれば、このリスクは30％、50％、さらにはそれ以上に跳ね上がる可能性も指摘されています。しかも、火災の熱によって生まれる火山性積雲（pyrocumulus）は、突如として激しい豪雨や突風を引き起こし、その結果、局所的な洪水は想像を超える大災害へと変貌します。このように、山火事と洪水は決して別物ではなく、互いにダメージを与えながら、破壊的な負のサイクルを加速させているのです。そして、気候温暖化の進行とともに、この悪循環はどんどん深刻さを増しています。

この危険なサイクルを無視すれば、取り返しのつかない未来が待っていることは誰の目にも明らかです。しかし、残念ながら、多くの政策決定者や地域社会は油断と無関心に甘んじ、状況を放置しています。証拠は明確です。火災によって荒廃した土地は、たとえ少しの雨が降っただけでも、猛烈な洪水となって街や村を襲います。たとえば、ギリシャの近年の熱波では、気温が40℃を超えた際、乾ききった土壌はまるで災害の引き金のように、一気に大量の水を巻き込みながら破壊的な洪水を引き起こしています。気候変動による未来予測によると、わずか1℃の温度上昇でも、年間の焼失面積は最大600％も拡大しかねません。経済への負担も計り知れず、火災の鎮火には何十億ドルもの費用が必要となるうえ、多くの命や暮らしが危険にさらされています。さらに、燃えさかる山火事から立ち昇る煙は、空気の質を悪化させ、子どもや高齢者といった脆弱な人々の健康をも蝕んでいます。私たちには、今すぐにでも行動を起こす必要があります。具体的には、排出削減を加速させること、土地利用を見直し、そしてレジリエンスの高いインフラ整備を推進することです。これらは選択ではなく、もはや義務なのです。最後に、山火事と洪水のこの連鎖は、私たちに対する緊急の警告です。この危機的な状況を乗り越えるには、政府や地域の連携、そして私たち一人ひとりの意識改革が不可欠です。協調と決断こそが、破滅のサイクルを断ち切る唯一の道です。