エルサルバドルの荒々しい風景の中にそびえ立つのは、まるで要塞のような巨大な刑務所、CECOTです。この施設は、国家の最も危険とされるギャングのメンバーを徹底的に封じ込める目的で建てられ、2023年の初めに正式に稼働を開始しました。その堂々たる姿や鉄壁の構造は、メディアの間ではまさに「決意の象徴」として絶賛され、多くの人々の関心を集めています。収容人数は最大で4万人と謳われているものの、実情はそう甘くありません。すでに14,000人以上の受刑者がぎゅうぎゅう詰めに詰め込まれ、狭くて衛生状態の悪い環境の中で暮らしているのです。この過剰収容の問題は一段と深刻さを増しており、さまざまな報告書は「医療やリハビリの機会すらほとんど与えられない長期拘留」や、「過酷な環境で耐える受刑者たち」の実情を浮き彫りにしています。一方で支持者たちは、「CECOTは暴力の激減と秩序回復に役立つ堅固な盾だ」と断言し、殺人件数の低下や地域の安全性向上といった数字を根拠に、その成果を強調します。しかし、こうした美辞麗句の陰に隠された現実も見過ごせません。実際には、多くの受刑者が劣悪な環境に耐え、場合によっては身体的虐待や人権侵害に苦しむケースも報告されています。つまり、CECOTは「安全保障の要」であると同時に、「人間の尊厳を犠牲にする場所」でもあるのです。私たちに問われるのは、「正義とは何なのか」「人権はどう守るべきなのか」という、根本的なテーマです。
60 Minutesをはじめとするメディアは、CECOTをまるで最後の砦のように描きます。高くそびえる壁や武装した警備員の姿、迫力のある映像によって、この施設の圧倒的な堅牢さを際立たせ、視聴者に「無敵の砦」という印象を与えています。ナレーションでは、「ギャングの活動を徹底的に封じ込めた」「殺人事件が大きく減少した」など、成功例を次々に紹介し、その効力を強調します。しかし、その裏側には見落としがたい問題も潜んでいます。長期間裁判も受けさせられずに拘留されている受刑者や、過酷な扱いを受けているという証言、さらには虐待の可能性などです。実際に現地からは、「拷問のような扱いを受けている」という声も寄せられ、それらの実態はメディアの表層的な報道の陰に隠されがちです。こうした情報操作によって、メディアはCECOTを「国を守るための不可欠なツール」として一方的に宣伝し、「強さこそ正義」というメッセージを強調しています。つまり、現実の悲惨さや人権侵害は見て見ぬふりをし、視聴者には「強さを追求すればすべて解決できる」と錯覚させているのです。
こうしたストーリーテリングの巧みさを駆使して、CECOTは国民の「不屈の象徴」としてのイメージを一新しています。例えば、大統領のテレビ視察やSNS投稿では、鋼の壁の写真や兵士たちの勇壮な映像を用い、「この施設こそ、国家の盾だ」と力強く訴えます。その結果、多くの支持者はその必要性を揺るぎなく信じ込み、「これが安全保障の最終兵器」と考えるようになっています。加えて、こうした映像や発言により、「危機に立ち向かう勇気」や「絶対的な力」を象徴するイメージが形成されるのです。反対派の声は次第にかき消され、過剰収容や人権侵害の問題は20世紀的な過去として無視されてしまいます。巧妙な物語作りと映像操作によって、社会の意識や政治的支持を巧みに操るこの戦略は、CEOTを単なる施設以上の、「国の精神」の象徴に押し上げています。こうして、「不屈の精神」や「強さと正義」のイメージが、まるで神話のように国民の心に刻まれ、最も論争の的となる政策さえも支持に変えてしまうのです。ストーリーテリングの力とは、まさに恐るべきコントロール装置だといえるでしょう。
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