アメリカの医療界を考えるとき、巨大な製薬企業の存在は避けて通れません。これらの企業は、一企業の枠を超え、経済全体を動かすほどの強大な力を持っています。たとえば、時価総額が何と2.1兆ドルを超えるこれらの巨人たちは、革新的な新薬の開発にしのぎを削りながら、その利益追求に熱を入れています。具体的に見てみましょう。自己免疫疾患の治療薬『ヒュミラ』では、2023年だけでメディケアが支払った金額がなんと66,000ドルにも達しました。これだけの金額は、最新の医療技術を最大限に活用した証拠であり、一方で、その背後にある実態も見えてきます。高額な薬価は、一部の企業のもうけを驚くほど押し上げており、欧州やカナダの価格の2倍以上のコストをアメリカの消費者が負担しているのです。この格差は、偶然できたものではありません。年間1億5千万ドル以上という膨大なロビー活動や政治献金を駆使し、法律や規制を巧みに操る戦略の結果なのです。こうした仕組みの中で、薬価は次第に天井知らずに高騰し、医療そのものが一部の利益団体のビジネスへと変貌を遂げているのです。さらに、普通の市民が必要とする医薬品を手に入れるのが難しくなるこの現実。結局、私たちが日常的に直面している医療の裏側には、利益優先の巨大な影が忍び寄っているのです。
では、なぜビッグファーマはこれほどまでに新薬の開発に力を入れるのでしょうか? 一つは、科学の革新だけではなく、莫大な利益を得たいという欲望も大きな動機です。例えば、エリクサー・リリーの『トルリシティ』やノボノルディスクの『オゼンピック』などの新ペプチド薬。その効果は患者の生活を一変させるほど画期的です。しかし、その価格もまた、驚くべき高額に設定されているのです。年間数十万ドルともいわれるコストは、企業の株主にとって魅力的な投資対象となっています。こうした高価格を維持する背景には、業界が選挙や政治活動に投じる巨額の資金があります。実際、最近の選挙期間だけでも1,500万ドル以上の資金が投じられ、数百人規模の元政府関係者がロビイストとして雇われています。彼らは巧みに法律を操り、長期間の市場独占権や特許の延長を実現させるのです。それは、希少疾病治療薬の価格が何百万円もすることに象徴されます。こうした薬は、患者にとっては手の届かない高級品のようです。これらの仕組みの背後には、利益を優先させる企業と政治の癒着が横たわっており、その結果、一般市民が必要とする医療のアクセスは制限されてしまうのです。この事実を私たちはしっかりと認識しなければなりません。医療が利益追求の舞台になっていること、それこそが、今なお続くアメリカの製薬業界の闇の部分なのです。
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