北東太平洋の中心地で、注目すべきプロジェクトが進行しています。探査海洋鉄解決策コンソーシアム(ExOIS)が主導するこの取り組みは、長年にわたり議論を呼んできた鉄施肥の方法を再評価し、そこに新たな希望を見出そうとしています。具体的には、栄養が不足した海の水に鉄を追加することで、光合成藻類の急激な成長を促します。これらの微小な生物は、海洋食物連鎖の基礎を形成し、二酸化炭素の吸収において非常に重要な役割を担っています。たとえば、光合成藻類が繁茂すれば、大量のCO2を取り込むことができます。そして、彼らが死ぬと、その遺骸は海底に沈み、「海洋雪」と呼ばれる自然の炭素貯蔵プロセスが発生します。このようなアプローチには、長期間にわたる膨大な炭素の捕集および隔離が期待されるだけでなく、気候変動への積極的な対応策ともなり得るのです。
こうした大規模な科学プロジェクトの成功には、資金調達が極めて重要です。ExOISは、研究を支援するために1億6千万ドルを集めることを目指しています。すでに、国家海洋大気庁(NOAA)から200万ドルの助成金を受け取ることに成功しており、その資金は最先端のコンピューターモデルの開発に使われます。これにより、さまざまな施肥シナリオをシミュレーションして、その効果を検証できるようになるのです。しかし、これはあくまで出発点です。コンソーシアムは、2026年には実際の試験を開始し、最大1万平方キロメートルもの広大な範囲を対象にする計画を立てています。この研究が科学的に信頼でき、環境に配慮したものであることを確認するためには、アメリカ合衆国環境保護庁(EPA)からの許可が不可欠です。こうした厳格な手続きを経ることで、プロジェクトの信頼性が高まり、海洋生態系への影響も真剣に考慮されることが保証されます。
しかし、このプロジェクトには大きな可能性がある一方で、論争も伴っています。鉄施肥の施策には、実施をめぐる過去の試験があり、そこでは期待された結果が得られなかった事例が存在します。例として挙げられるのが、2009年の実験です。この実験では光合成藻類の大規模な繁茂を促すことに成功しましたが、驚くべきことに、その多くは海底に沈むことなく、表層の動物プランクトンに食べられてしまいました。このことから、今後の光合成藻類の繁茂が具体的にどのように二酸化炭素の捕集につながるのかが重要な課題となります。また、生態系への影響についての懸念も少なくありません。有害な藻類が繁茂すると「死のゾーン」が生じ、海洋の生物多様性が脅かされるリスクがあります。それでも、鉄施肥の支持者たちは、技術の進展や透明性に対する取り組みによって、この方法が気候変動の解決策となる可能性が高いとしています。この新しいジオエンジニアリングのアプローチを探求する中で、科学の革新と環境保護のバランスをとることがますます重要になっているのです。
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