2024年10月、歴史的な発表が行われ、ノーベル経済学賞がダロン・アセモグル、サイモン・ジョンソン、ジェームズ・ロビンソンに授与されました。彼らの研究は、制度が経済の成果に果たす重要な役割を明らかにしており、その影響は広範囲に及びます。特に面白いのは、彼らが制度を「インクルーシブ」と「エクストラクティブ」の二つに分類したことです。インクルーシブ制度は、例えばカナダのように、財産権の保護や民主的なガバナンスを通じて多くの人々の生活を向上させることを目指します。一方、エクストラクティブ制度は、利益を少数の特権層に集中させ、多くの人々に機会を与えない仕組みです。このような制度の違いは、国によって経済的な結果が大きく異なる原因ともなっています。 特に、植民地主義がもたらした影響は根深いものがあり、カナダと多くのアフリカ諸国との経済的格差を生む要因となっています。
とはいえ、受賞者の理論には批判も存在します。著名な経済学者、ムシュタク・ハーンやユエン・ユエン・アンは、植民地の歴史を持つ多くの国々が、必ずしもインクルーシブな制度を持つことなく経済成長を遂げてきたと指摘しています。たとえば、シンガポールや韓国は、腐敗やガバナンスの問題が存在する中でも、その強力な経済を築き上げました。この事実は、成功するためにインクルーシブ制度が必須であるという従来の考えに疑問を投げかけます。代わりに、戦略的な政策決定や社会的な絆が経済の成功において重要な役割を果たす可能性があるのです。
さらに、受賞者たちの分析には見落とされた点も多いです。彼らは入植者植民地と非入植者植民地の結果を比較していますが、その背景には暴力や抑圧の歴史が存在します。成功した制度を持つ入植者植民地でも、初期の侵略や搾取が先住民社会に多大な影響を残しています。例えば、アメリカの先住民は、その経済的かつ文化的な側面で大きな損失を経験しています。こうした歴史的な視点を含めることで、特定の国が経済的な強国へと成長する理由や、逆に他の国が困難に直面する理由をより深く理解することができるのです。このように、制度の発展と経済成長の関係は非常に複雑であり、より深い議論が求められています。
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