中国では、2019年以降続く住宅市場の長期低迷に対し、政府はこれまで以上に積極的な施策を次々と打ち出しています。これらの政策は、市場の活性化を狙った多角的なアプローチであり、まさに「需要を喚起し、信頼を回復させる」ための総合的なツールキットともいえるでしょう。たとえば、全国規模で住宅ローンの金利を引き下げる補助金制度や、初めて住宅を購入する人向けの所得税還付を増やす施策、さらに取引手数料の大幅な引き下げなど、多彩なインセンティブを並べています。こうした取り組みは、まるで「市場に新たなエンジンをかける」ようなもので、少しでも購買意欲を刺激しようとするものでした。しかしながら、一方でこうした努力だけで長期的な衰退を完全に止めることができるのかと問いかけざるを得ません。まるで火に油を注ぐかのように、一時的には火が燃え広がるかもしれませんが、根本的な問題に手を付けなければ効果は限定的です。最も重要なのは、市場参加者の心に根付く不信感を払拭し、真の信頼を築き直すことです。信頼無くして、その先に待つのは一時的な局地的回復ではなく、持続可能な長期成長の実現なのです。
それにもかかわらず、実際の結果は厳しい現実を突きつけています。例えば、上海や北京の住宅価格はわずか3ヶ月で10%超の下落をし、昨年の10月には1年以上にわたる最悪の価格下落を記録しました。この動きは、いかに危機が深刻化しているかを如実に示しています。一方で、銀行の状況も深刻さを増しており、不良債権は過去最高の3.5兆元に達しました。これは、金融システムの脆弱さを物語っています。政府は購入制限の緩和や金利引き下げといった政策も行っていますが、期待された需要の拡大にはつながっていません。まるで「死体に新たな衣装を着せる」ような表面的な措置に過ぎず、真の問題の解決には至っていません。さらに、経済不安や将来への不透明感から、多くの家庭が借金を控え、節約志向を強めています。この結果、消費の冷え込みと価格のさらなる下落が進み、危機は一段と深まりつつあります。こうした現状は、短期的な刺激策だけでは解決できないこと、そして長期にわたる抜本的な改革が不可欠であることを浮き彫りにしています。
この危機の根底にあるのは、不動産だけにとどまらず、経済の根本的な構造的問題です。たとえば、年平均成長率はわずか5%前後にとどまり、多くの経済指標は鈍化の兆しを見せています。こうした状況の一例が、住宅価格の下落による家庭の資産価値の減少です。これによって、消費や投資意欲は冷え込み、いわば負のスパイラルに陥っています。こうした悪循環を断ち切るには、金利の引き下げや税制優遇だけでは不十分です。真に持続可能な成長を目指すなら、所得を増やし資産価格を安定させる改革、さらに投資環境を整備して信頼を回復しなければなりません。要するに、信頼の醸成こそ未来を切り拓く鍵であり、そのためには、短期的な対策を超えた抜本的な変革への勇気と決断が必要不可欠です。こうした見地から、今こそ経済の土台を根底から見直す時期であり、大胆な一歩を踏み出すべきだと言えるでしょう。
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