オーストラリアでは、最近の洪水によって私たちの水に関する常識が根底から覆されています。一見すると、洪水は新たな水資源をもたらし、プラスの側面も見えますが、その実態は全く異なります。これらの洪水は、壊れやすい卵を流し去り、繊細なオタマジャクシを溺死させ、最終的には成体のカエルまでも絶滅の危機に追い込みます。そのため、洪水後の短期間でのカエルの復活はほぼ不可能と言っていいほどです。たとえば、2021年の洪水の影響を調査した科学者たちは、カエルの種の多様性—つまり、さまざまな種類のカエルの声が聞こえる数—が急激に減少したことを確認しました。さらに、洪水がもたらす二次被害も見逃せません。薬品や肥料、農薬などの化学汚染物質が水とともに広がり、残存しているカエルたちを毒しています。これに加えて、クロイジジ菌のような致死性の真菌も水の中で繁殖し、危機をさらに深刻化させているのです。このように、さまざまな危険要素が複合的に作用し、私たちの身の回りの水辺の生態系を脅かしています。
一方で、山火事は、火が一気に森林や生息地を焼き尽くすため、さも最も直接的で破壊的な災害のように思われがちです。しかし、意外なことに、多くのカエルは火の後も生き延びるケースが少なくありません。火災直後の調査では、多くの個体が奇跡的に生存しているだけでなく、種の多様性も一時的にはあまり変化せずに保たれていることが分かっています。これは、カエルが地下に潜ったり、湿った残骸の下に避難したりできる能力によるものです。ただし、この一時的な耐性には大きな落とし穴もあります。長期的には、生息地の喪失や水不足、繁殖サイクルの破壊といった見えにくい危険が徐々に積み重なり、カエルの数を減少させるのです。特に、熱帯雨林などの繊細な生態系においては、その影響は計り知れません。このような現象は、一見生き延びたかのように見えるカエルたちの裏にも、深刻な危機が潜んでいることを教えてくれます。継続的な調査と適切な対策が求められる所以です。
この、洪水と山火事という異なる自然災害の対比は、私たちにとって重要な教訓を提示しています。それは、気候変動による猛攻に抗うために、保全活動もまた迅速で柔軟な進化が必要だということです。カエルは「バイオインジケーター」として知られ、その声や姿は環境の健康状態を如実に映し出します。もし彼らの数が減少し、種の多様性が失われつつあるのなら、それは、地球の未来に深刻な危機が迫っている兆しです。昨今では、市民ボランティアが参加できる科学調査プログラムが急速に普及し、何千人もの人々が毎日カエルの鳴き声を録音しています。こうしたデータは、洪水や火災の後に起こる種の急激な減少を早期に発見し、適切な対策を講じるために不可欠です。たとえば、洪水に強い繁殖場所の復元や、水源汚染を防ぐための化学物質の排除、火災や洪水から守られた自然保護区の設置など、具体的な取り組みが必要です。そして、何よりも、地域の人々の意識向上と積極的な参加を促すことが、保全成功への鍵となります。彼らを単なる観客ではなく、共同のパートナーとして位置づけることが、未来の生態系を守る最良の策なのです。カエルを守ることは、ひとつの種を救うだけではなく、地球の生命維持の根幹ともいえる生態系の安定を保つための重要な一歩です。今こそ、私たちが立ち上がり、革新的なアイデアと迅速な行動で、この危機を打破していく時です。未来を担う次世代のために、私たちは何をすべきか、その答えを見つけ出さなければなりません。
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