トランプ大統領がアメリカの世界保健機関(WHO)からの撤退を発表したことは、世界中の公衆衛生にとって非常に懸念すべき事態です。これは単なる政治的な動きに留まらず、私たちの健康や生活に直接的な影響を及ぼします。WHOの役割は、国際的な健康危機に迅速に対応すること。その重要性は、エボラ出血熱の流行の際に明らかでした。その時、WHOは各国を団結させ、危機を乗り越えるための中心的な役割を果たしました。もしアメリカがWHOから撤退すれば、影響力を失うだけでなく、感染症対策における共同の努力からも脱落する危険があります。
この撤回には、財政面でも相当な影響が予想されます。アメリカは過去に、WHOに対して最大の寄付国であり、その前年の予算の約20%にあたる、10億ドル以上を提供していたのです。この資金があることで、WHOはワクチン接種キャンペーンや重要な健康プログラムを実行することができました。実際、ZikaウイルスやCOVID-19といった健康危機に直面した際、アメリカからの資金援助は非常に重要な役割を果たしました。このような支援が失われれば、各国は混乱に直面し、新たな脅威に対する対応が遅れるかもしれません。ドイツのような国が過去に支援を行っても、アメリカの不在を埋めることができるのか、非常に疑問です。
さらに、WHOからの撤退は、パンデミックに備えるための協力を妨げることになります。WHOは、健康脅威を監視し、各国が効果的に対応できるための情報やツールを提供しているため、その存在は欠かせません。有名な公衆衛生法の専門家であるローレンス・ゴスティン氏は「病原体に対して国境を閉じることはできない」と警告しています。これは、健康問題は国境を超えるものであり、協力が不可欠であることを強調しています。アメリカが孤立すれば、逆に感染症に対して脆弱になる可能性があります。現在の世界において、健康協力は非常に重要な要素です。WHOからの撤回は、未来の健康問題に備えた危険な前例となるでしょう。私たち全員が、見えないリスクにさらされることになるかもしれません。
Loading...