長年にわたる敵対は、エチオピアとエリトリアの関係に暗い影を落とし続けている。エリトリアの独立闘争は1993年に最高潮に達したが、そのわずか五年後、両国は血みどろの戦争に突入し、多くの人命が奪われた。この傷跡は今も深く残り続けている。たとえ2018年に和平条約が締結されたとしても、根本的な問題は解決されていない。特に国境紛争や紅海へのアクセス権は、両国の間に火種としてくすぶり続けているのだ。エリトリアの独立によってエチオピアは内陸国となり、港湾の喪失を「歴史的な不正義」とみなしている。そのため、アサブ港の復活を絶対に譲れぬ目標とした声が高まり、港の奪還を軍事的に目指す動きも強まっている。実際、エチオピアの指導者たちは「港を取り戻すことは国家の存亡に関わる」と明言し、軍事行動も辞さない構えだ。一方で、エリトリアは慎重ながらも強固な姿勢を崩さない。彼らは、「赤の線」を越える行為を絶対に許さないと断固とした態度を示し、その境界線は侵略の一線とみなしている。もしこの線を越えれば、戦闘の再燃や地域の混乱は避けられず、過去の傷を再び深めることになるのだ。こうした対立の根底には、未解決の約束違反や戦争の傷跡が横たわる。領土や主権、経済の安定、そして国家のアイデンティティをめぐる問題は、まさに高まる危機の象徴だ。
最近の状況は、アディスアベバの発言が一段と挑発的になっていることを示している。首相アビイ・アハメドと軍の高官たちは、「紅海へのアクセスを取り戻すことは、エチオピアの将来にとって不可欠だ」と断言し、港の喪失を「国家の恥」とみなしている。彼らは、力による解決も辞さない構えを見せ、演説では「海の喪失は国家の尊厳に関わる問題だ」と強調する。実際の軍事パレードでは、戦車が都市の通りを轟音とともに走り抜け、兵士たちの士気は高まり、決意の固さを誇示していた。これに対し、エリトリアの対応は慎重さを保ったまま堅固な態度だ。政府は、「『赤の線』を越える行為には断固反対する」と宣言し、その境界線を明確に示している。ここでいう「赤の線」とは、侵略行為の明確な境界であり、それを越えれば、戦争に突入しかねない第一歩となるのだ。両国は軍備の増強や激しい言辞の応酬を繰り返し、1998〜2000年の戦争を彷彿とさせているが、今回はより一層危険な局面に差し掛かっている。こうした緊張緩和の兆しが見られぬまま、危機は日々高まっており、解決への道筋が見えないままだ。
もしもこのまま紛争が火の手をあげれば、その影響は計り知れず、地域だけでなく世界全体に波紋を広げるだろう。紅海の港湾は、世界の貿易やエネルギー供給の生命線だ。これらを掌握することは、経済の流れだけでなく、地政学的な盤石さも左右する。例えば、アラブ諸国や欧米、そしてアフリカ諸国もこの動向を注視しており、小さな火種が大火事へと発展しうる危険を警戒している。過去の教訓の中でも、エチオピアとエリトリアの国境戦争は、未解決のまま多くの犠牲を生み、その悲劇は決して忘れられない。外交手段が破綻すれば、アフリカの角はさらに深い危機に陥る可能性が高い。人道危機や難民問題、社会的混乱は避けられず、その流れは国境を越えて広がってしまうだろう。今こそ、対話と妥協を重ね、信頼を築く努力が求められる。そうしなければ、歴史はまた悲劇の繰り返しを見せるだけだ。真の平和を築くには、双方の真剣な協力と妥協が不可欠である。
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