南アフリカ南部の中心に位置するレソトは、「山の王国」として知られています。ここでは水が単なる資源ではなく、その重要性から「白い金」と称されています。この国は全土が1,000メートル以上の高地にあり、降水量が豊富で、南アフリカにとっては重要な水源となっています。近隣国の水の需要が急増しているため、レソトの水はその価値が高まっています。1996年に完成したカトセダムはアフリカで二番目に大きい曲面ダムとして、レソト高地水プロジェクトの優れた技術を示しています。このプロジェクトはアパルトヘイト時代の歴史的合意から始まり、南アフリカへの水供給とレソトの水力発電を目的としています。これにより、資源管理と国の発展の関係が浮き彫りになっています。
水の豊かな国であるにもかかわらず、レソトの多くのコミュニティ、特にハ・ラモコアツィ村などは水不足に苦しんでいます。この村はカトセダムからわずか1キロしか離れていないにもかかわらず、汚染された自然の泉に頼っており、住民200人は健康リスクにさらされています。地元の母親、マンテボヘレン・モシヨアは、清潔な水の不足に対する苛立ちを語り、安全でない水が子供たちの健康に悪影響を与えていると訴えています。レソトは南アフリカへの水の輸出から年間約2億ドルの収益を上げていますが、この利益と地元住民の生活環境には大きなギャップが存在し、ハイランド水プロジェクトの利益の公平な配分についての議論が急務となっています。
レソトはハイランド水プロジェクトを進める中で、持続可能で公平な資源管理の重要性がますます認識されています。政府関係者、特にモフロミ・モレコ大臣は、地元のコミュニティへの水供給が不十分であった過去を認め、2030年までに改善を約束しています。しかし住民は未達成の約束に対して懐疑的な気持ちを抱いており、状況は複雑です。また、地域の水需要の高まりもあり、資源配分を管理する政策の見直しが求められています。レソトは公平性と住民のニーズに焦点を当てることで、その「白い金」が経済成長のみならず、地域社会の健康や生計にも貢献し、未来の世代に明るい未来をもたらすことができると言えるでしょう。
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